日本医師会の要望に反して、政府はなぜ緊急事態宣言を出さないのでしょうか

4月1日午後 2時から「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」が開かれました。夕刻には、日本医師会が定例会見を行い、横倉義武会長は「医療危機的状況宣言」を行い、医療提供体制を維持するため、国民に適切な受診行動をとることなどを呼び掛けをしました。web site にて「新型コロナウイルス感染症に関する日医の対応について」と題して、その要旨が記されています。

国が国民生活及び国民経済への影響を踏まえて検討している緊急事態宣言の発令については、「現在行っている対策は2週間後に結果が表れることから、感染爆発が起こってからでは遅く、今のうちに対策を講じなくてはならない」と強調。2018年にノーベル医学・生理学賞を受賞した本庶佑氏からの助言も受け、医療現場から「医療危機的状況宣言」を行うとし、医療提供体制を維持するために、国民に対して自身の健康管理、感染を広げない対策、適切な受診行動を要請した。

日本医師会は、政府に対し緊急事態宣言を出すように強く要請していますが、政府が宣言を出さないので、「医療危機的状況宣言」を出したと読めます。新型コロナウイルス感染症対策専門家会議のメンバーでもある釜萢敏常任理事は、質疑応答の際に、政府に緊急事態宣言を出すよう訴えていることに言及しました。

いろいろな、国がとることのできる手段を早く準備しておくということは是非必要だろうと思います。(中略)国がこの非常事態宣言(原文のまま)を出すにあたっては、医療の状況、あるいは感染の拡大の様子ももちろん大事ですけれども、やはり国民の生活あるいは経済に与える影響というような事も踏まえて判断をするということになっていますから、私どもの立場としては、早く国にそういう宣言を出して欲しいという思いを伝えているところであります。

すでに 3月30日の日本医師会の会見で釜萢敏氏は、

その他、記者との質疑応答の中で、特別措置法に基づく「緊急事態宣言」を政府が発令すべき時期について質問された同常任理事は、多くの専門家会議の委員は、「爆発的な感染が起きてから宣言を出しても遅い」という認識をもっていることを紹介。あくまでも個人的な意見とした上で、「現状は、宣言を出しても良い状況にあるのではないか」とした。

と、緊急事態宣言について言及しましたが、加藤勝信厚生労働相は、東京新聞の『「緊急事態宣言」は個人的見解 日医幹部発言巡り厚労相』の記事によると、「個人的な見解」として切り捨てました。

加藤勝信厚生労働相は31日の記者会見で、新型コロナウイルス感染症の政府専門家会議メンバーの日本医師会幹部が緊急事態宣言を出す時期だと発言したことを巡り「個人的な見解だと認識している」と強調した。同時に、緊急事態宣言を4月1日に発令するとのうわさを否定した。「菅義偉官房長官が明確に否定している。『ぎりぎり持ちこたえている状況』だ」と語った。 
日本医師会の30日の記者会見で、釜萢敏常任理事が緊急事態宣言について「個人的にはもう発出し、それに基づき対応する時期ではないかと思う」と述べていた。

この経緯も踏まえ、1日の会見では、個人の見解かと問われ、日本医師会としての意見であるとして、

日本医師会としてです。

と言明しました。日本医師会としての考えを問われ、あらためて、

日本医師会としての現状認識からすると、(中略)日本医師会の立場としては、国がそういうふうな緊急事態宣言を発出いただく時期であろうというふうに見解を述べたという事であります。

と答えています。もはや釜萢敏氏の個人的な意見ではありません。

緊急事態宣言は補償と一体化せねばならないと声高に主張される方もおられますが、補償も税金からです。この現況からすると、今年度はどの個人経営のお店も、企業も赤字決算は避けられず、所得税、法人税収入は激減し、その財源の手当ても十分できるはずがない事は誰にでも容易に想像できます。諸外国でも、必ずしも補償と一体化せずに緊急事態宣言を行っています。

法律的な要件についても云々されます。橋下徹氏の Twitter では

特措法が大欠陥。全国的な蔓延を防ぐための行動が必要なのに今の特措法は、全国的な蔓延になってから。それでは遅い! 本来は全国的な蔓延を防ぐ前の、予防宣言が必要。緊急事態というフレーズが仰々しいのでなかなか出せない。予防宣言で十分。国会議員がきちんと法律を作らなかった

まず救えるはずの命を救うべきです。

新型コロナウイルス関することを記したものを、綴っています。
→「新型コロナウイルス COVID-19」