某プロ野球選手達の新型コロナウイルス 「IgG 抗体陽性」「PCR 微陽性」問題について

某プロ野球選手達が球団が行った新型コロナウイルスの抗体検査で陽性を示したにも拘らず練習試合にも出場、その後 PCR 検査で「微陽性」になったと報じられました。某球団は「微陽性」で「抗体もある」ので、PCR 検査が陰性になればすぐに復帰するような能天気なコメントを発表したと報じられました。

THE PAGE 6月4日付け「問われる巨人の見識と姿勢…なぜ新型コロナ抗体検査陽性の坂本、大城を PCR 検査前に2日の西武戦に出場させたのか?」の記事では、

巨人の説明によると、「2人の新型コロナウイルス遺伝子量(CT値)は微量で、正常値ぎりぎりの『微陽性』にあたる上に、ともに回復を示す『IgG 抗体』を持っていることから、専門家からは2人ともに感染から回復した後、かなりの時間がたっているとの見解を得ている」という。

と、記されています。確かにウイルス感染後に、まず IgM 抗体が増えピークを迎え、少し遅れて IgG 抗体が増えピークに達します。よって IgM 抗体が陰性で、IgG 抗体が陽性であれば過去の感染を示します。確定診断が抗体検査になる「おたふくかぜ、流行性耳下腺炎」は、ムンプスウイルスの IgM 抗体を調べます。ムンプスウイルス IgM 抗体が陽性であれば、「おたふくかぜ、流行性耳下腺炎」と診断されます。現在の医療保険制度では、IgM 抗体とIgG 抗体を同時に保険請求出来ませんので、感染初期の IgG 抗体に着目されませんが、まだ十分感染期にある初期の段階でも、IgM 抗体とIgG 抗体共に陽性になります。ウイルスの種類によって、IgM 抗体のでき方、IgG 抗体のでき方は異なります。新型コロナウイルスについてもまだ抗体のできるタイミングは十分知られていません。にもかかわらず、IgG 抗体が陽性イコール過去の感染と、本当に専門家が結論を出したのでしょうか。IgM 抗体検査は行われていたのでしょうか。IgM 検査を行わず、IgG 検査陽性だけであれば、まだ十分他人へ感染の可能性がある時期かもしれません。IgM 検査が一緒に行われていたとしても、その精度が信頼できる検査方法だったのでしょうか。

NPB が専門家チームの提言を受けて作成したガイドラインでは、感染者には、陰性反応後も、2週間の自宅待機措置を講じることを義務づけようとしているが、今回は、その措置はとられない。

一般の人々でも陰性退院後、2週間は自己隔離が望ましいとされている現状です。今回、該当の選手が早期に復帰するのであれば、社会全体に誤った認識を植え付け、広げてしまいます。

THE PAGE 6月9日付け「巨人の「微陽性騒動」が専門家釈明で決着も全球団 PCR定期検査実施決定で無症状感染者の対応に不安残る」の記事で、

世間では、まるでメディアの造語のようにも受け取られているが、なんらかの意図をもって巨人が賀来・特任教授の会話の中の言葉を切り取り、あたかも医学用語のようにプレスリリースに掲載したことが発端なのだ。  

さらに賀来・特任教授は、「ぜひ、ご理解をいただいて、その言葉は使わないでいただきたい、と私からもお願いします」と、今後、無症状感染者を表す場合の医学用語として「微陽性」を使用しないことを訴えた。

と、「微陽性」を某球団が都合の良いように使い、マスコミが検証することなく使用した様です。

スポーツ新聞などマスコミ各社は某球団に忖度して報じない方針の様ですが、東スポは 6月9日付け「原巨人大誤算!坂本開幕スタメンピンチ」の記事で、

斉藤コミッショナーは陽性者が出た際の復帰の基準を聞かれ「時間をおいて(PCR検査)陰性2回。今のルールはそれで退院はしていい」としたが「だけどすぐ外で活躍していいというふうには今はなっていない。今日現在は(専門家チームの)三鴨先生(愛知医科大)も何回もおっしゃってましたけど、法治国家なんだからルールを破ることはできない。今現在だと(経過を)2週間、見なきゃいけない」と明言した。

と、斉藤 惇 NPB コミッショナーの発言をきちんと報じています。