厨房で見る夢
在日ネパール人コックと家族の悲哀と希望
ビゼイ・ゲワリ Bijay Gyawali 著
田中雅子 監訳・編著
上智大学出版
2022年3月10日 第1版第1刷発行
本書は、ネパール人臨床心理士のビゼイ・ゲワリ氏がネパール語で書いた「Cheeze Naan : Hopes and Struggles of Nepalese cooks in Japan チーズナン:在日ネパール人コックの希望と葛藤」の出版に先立ち、その英語訳を日本語に訳し、編集されたものだそうです。
監訳・編著をされた田中雅子さんが巻末に「ネパール人コックの移動から見える日本の課題」と題し、本書の内容をまとめられています。そこで著者ビゼイ・ゲワリ氏の経歴として、トリブダン大学で学びながら鍼灸師の資格を取り、東洋医学を学ぶために日本に留学。臨床心理学の習得に進路を変更、国際医療福祉大学大学院で博士号を取得と紹介されています。
その彼が臨床心理士としてカウンセリングを行った、心の悩みを抱いたネパール人コックと家族、彼らに共通して見られる課題を提起するために本書が企画されたとのことです。相談者から得た情報と共に、ビゼイ氏自身の疑問や考察を織り交ぜたエッセイという体裁にまとめられています。
皆知ってはいるがあまり触れられることのなかった「呼び寄せビジネス」についても詳細に記されています。
経営者は、来日を夢見る人々の思いにつけ込んで、コックを薄給で雇う。それが嫌なコックは、経営者となり、自分がたどった道を他のコックに強いる。
と、人身売買のような日本への移住の連鎖にも言及されています。
「家族の呼び寄せ」や「在留資格」などに関する実情や、闇の話など、おぼろげに理解していたことも掘り下げた話を知ることが出来ます。
小林真樹氏が本書でもコラムを書かれており、直前に出版された「日本のインド・ネパール料理店」と合わせて読むと、更に興味が深まります。