新型コロナウイルス感染症による死亡者が皆無のネパール COVID-19

3月23日ネパールで 2人目の新型コロナウイルス感染者が確認されると、ネパール政府は数時間後には 24日朝から 1週間の全国土の都市封鎖ロックダウンを決定し実行しました。3月23日付けの The Kathmandu Post 「Nepal goes under lockdown for a week starting 6am Tuesday」の記事によると、フランスからカタール経由で帰国した19歳のネパール人の学生がその 2人目の感染者でした。

3月29日付けの The Kathmandu Post 「Nationwide lockdown extended until April 8, ban on international flights until April 15」の記事によると、その全国土の都市封鎖ロックダウンは 4月8日まで延長、3月31日までとされていた国際線の飛行禁止も4月15日までになりました。3月28日政府の発表によると、別のベルギーから帰国した 19歳の女性が陽性であり、2例目とカタールから搭乗した飛行機が一緒でした。他に UAE のシャルジャ空港から帰国した Dhading 出身の 32歳男性と、同じく UAE のドバイ空港から帰国した Dhangadhi 出身の 34歳男性も陽性で、この時点で国内感染者は 1月の 1名を含め、5名となっています。

3月29日付けの The Himalayan Times 「Person under treatment in isolation at Butwal dies」の記事では、3月19日にドバイから帰国した 34歳男性が亡くなられ、病院関係者によると、検査のための検体をカトマンズに送ったが結果はまだ戻ってきておらず、前述のドバイから帰国した 34歳男性と同一人物かは不明です。

3月30日付けの The Kathmandu Post 「Authorities face a hard time when it comes to contact tracing those who travelled with four Covid-19 patients」の記事では、最近海外から帰国して陽性であった 4名と同じ飛行機に搭乗した 458名の乗客のうち、連絡がとれているのは 156名のみで、残り 302名とは連絡がとれてすらいません。更に帰国後の国内での移動の際の濃厚接触者の調査は全く不可能の様です。

4月2日付けの The Kathmandu Post 「Health Ministry confirms sixth Covid-19 case」の記事で、6例目の症例が、

4月4日付けの The Kathmandu Post 「Nepal confirms three more Covid-19 cases, including first case of local transmission」の記事で 7例目から 9例目の症例が、初めての国内での感染症例も含め報告されました。

4月11日付けの The Himalayan Times 「Bir hospital starts COVID-19 tests」の記事で、ようやく Kathmandu の中心に位置する Bir hospital でようやく PCR 検査を開始するとのことです。1日に 60 検体を検査することが出来、400 検体分の試薬のストックが有る様です。この記事が書かれた時点で、ネパールでは 3525 検体が検査され、3516 検体が陰性と記されています。陽性の 9 検体は、検査に回った検体の 僅か 0.3 %です。陽性者は全員生存していますので、ネパールでは新型コロナウイルス COVID-19 感染による死者が皆無ということになります。

Government of Nepal, Ministry of Health and Population の web site では、4月11日現在の数字として、४४२६ परिक्षण गरिएको (4426 tested)、४४१७ संक्रमण नदेखिएको (4417 no infection seen)、८२ आइसोलेशन (82 isolation)、९ संक्रमण देखिएको (9 infection seen)、१ निको भएको (1 healed)、० मृत्यु भएको (0 died) と発表されています。この数字を用いると、検査での陽性率は更に低くなり 0.2 %です。

入国を禁止する前の中国との人の往来の多さなどを考えると、検査陽性率、感染者数、死亡者数とも周辺諸国とはかけ離れた数字となっています。最近では、上記 2紙とも疑わしい死亡症例について殆ど報じなくなってきました。政治的な意味合いを持っていないことを願います。

新型コロナウイルス関することを記したものを、綴っています。
→「新型コロナウイルス COVID-19」

 

 

緊急事態宣言で新型コロナウイルスの基本再生産数をどこまで抑えることが出来るのでしょうか COVID-19

緊急事態宣言がようやく発出されましたが、諸外国で既に行われているロックダウンには程遠く、各都府県知事が行う、外出自粛の要請、施設使用停止、イベント制限・中止の要請・指示も及び腰です。その効果として、新型コロナウイルスの基本再生産数 Ro : Basic Reproduction Number(感染力のある 1人の感染者が、免疫の獲得もしくは死亡によりその感染力を失うまでに何人の未感染者に伝染させたかの人数)をどこまで抑えることが出来るのか疑問です。この数字が 1より小さくならねば、感染は収束せず、拡大を続けます。

前回の記事「緊急事態宣言と新型コロナウイルス感染症拡大のシミュレーション COVID-19」でも引用した、Nature, 02 April 2020 の Special report: The simulations driving the world’s response to COVID-19  How epidemiologists rushed to model the coronavirus pandemic.では、英国が進めた方針とウイルスの基本再生産数の推移が示されています。50% 信用区間でみると、何も方策をとらなかった時が 3の後半から 4、Self-isolation で 3の半ば、Social distancing で 2の後半から 3の前半、School closure で 2の半ばから 3、Public events banned and complete lockdown で 0の後半から 1の半ばです。

London School of Hygiene & Tropical Medicine, 1 April 2020 の Reproduction number of COVID-19 could be below one in UK lockdown  では

They found that the mean number of contacts per person measured was more than 70% lower now than before the lockdown.

This suggests that the reproduction now would be between 0.37 and 0.89 with the most likely value being 0.62.

一人当たりの接触が、ロックダウン以前と比べて 70% 以上減り、基本再生産数が 0.37 から 0.89 (最頻値は 0.62)になっているであろうと推察しています。1 より小さいので、感染拡大が制御されていることを示します。

新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針 令和2年3月28日(令和2年4月7日改正)新型コロナウイルス感染症対策本部決定 には

こうした対策を国民一丸となって実施することができれば、現在拡大している感染を収束の方向に向かわせることが可能である。具体的には、国民においては、不要不急の外出を避けること、「三つの密」や夜の街を極力避けること、事業者においては、業務継続計画(BCP)に基づき、出勤者の 4 割減少はもとより、テレワークなどを活用することで、さらに接触の機会を減らすことを協力して行っていく必要がある。30 日間に急速に収束に向かわせることに成功できたとすれば、数理モデルに基づけば、80%の接触が回避できたと判断される。

と書かれています。ロックダウンをしても、減らすことのできる接触の機会は 70%とシミュレーションされます。緊急事態宣言発出後の、各都府県の方針は、ロックダウンとかけ離れ、「 80%の接触の回避」の達成は到底不可能です。

安倍首相の緊急事態宣言後の会見で NHK の某記者が、

ここに至るまで異例の対応が続いてきた思います。イベント自粛や一斉休校、それでも感染拡大を抑えることが出来なかった、この原因についてどのように分析されていますでしょうか。

と質問しました。イベント自粛や一斉休校で感染拡大が抑えられるはずがありません。感染のピークを少しでも遅らせ、医療崩壊を少しでも遅らせる、様子を見ながら行われる施策の一つです。英国では、順に施策を拡大し、School closure まで行っても基本再生産数を 1以下に抑えるどころか、2の半ばから 3までがやっとなのでロックダウンに踏み切った事実を、この記者はご存じの上での質問なのでしょうか。ただ政府批判へ誘導しているだけにしか映りません。きちんと批判するのであれば、ロックダウンなしに 80%の接触の回避が可能なのかを質問すべきです。

新型コロナウイルス関することを記したものを、綴っています。
→「新型コロナウイルス COVID-19」

緊急事態宣言と新型コロナウイルス感染症拡大のシミュレーション COVID-19

ジョンソン英国首相にロックダウン都市封鎖を決意させた根拠と噂されるのが、Imperial College London の WHO Collaborating Centre for Infectious Disease Modelling; MRC Centre for Global Infectious Disease が出した「Report 12 – The global impact of COVID-19 and strategies for mitigation and suppression」と題する報告です。それに添付されたデータ、Data on global unmitigated, mitigated and suppression scenarios: Imperial-College-COVID19-Global-unmitigated-mitigated-suppression-scenarios.xlsx には各国毎にシミュレーションを行った衝撃的な数字が並びますが、日本ではあまり話題に上りません。

日本は何も対策しない場合、ウイルスの基本再生産数 Ro : Basic Reproduction Number(感染力のある 1人の感染者が、免疫の獲得もしくは死亡によりその感染力を失うまでに何人の未感染者に伝染させたかの人数)が最も高い予想値 3.3 であれば、人口約 1億 2600万人のうち、約 83% の約 1億 500万人が感染し、入院ベッドが約 580万床必要、約 195万人が集中治療を必要とし、約 147万人(死亡率約 1.4%)が亡くなるとの予測です。対策を出来る限り十分に行い、ウイルスの基本再生産数が最も低い予想値 2.4 でも、約 39%の約 4900 万人が感染し、入院ベッドが約 154万床必要、約 31万人が集中治療を必要とし約 23万人(死亡率約 0.5%)が亡くなるとの予測です。

Nature 02 April 2020 の Special report: The simulations driving the world’s response to COVID-19  How epidemiologists rushed to model the coronavirus pandemic.では、英国が進めた方針、Self-isolation、Social distancing、School closure、Public events banned and complete lockdown と進めていくうちに、ウイルスの基本再生産数が約 4から約 1へと小さくなっていった表も示されています。

ロックダウンを伴わない日本の緊急事態宣言で、この ウイルスの Basic Reproduction Number 基本再生産数を、どこまで小さくすることが出来るかが命運を握りそうです。

また、同記事では 8月一杯まで Case isolation, household quarantine and general social distancing という介入をとった場合と、8月一杯まで School and university closure, case isolation and general social distancing という介入をとった場合のその後をシミュレーションしていますが、前者では 10月末頃に人口 10万人当たり集中治療ベッドが約 100床必要な、後者では 12月初め頃に同約 160床必要になる、「第二波 Second wave」が到来することを予測しています。

「いつまで緊急事態宣言を続けるのか、その根拠を示せ」などと、批判しかしない野党やマスコミの方がおられますが、緊急事態宣言が 5月6日までの 1ヶ月だけでは、不十分なことは誰の目にも明らかです。

4月7日追記

4月7日早朝に、ボリス・ジョンソン首相が症状悪化のため集中治療室に移されたとの報道 Coronavirus: Boris Johnson moved to intensive care as symptoms worsen がありました。

新型コロナウイルス関することを記したものを、綴っています。
→「新型コロナウイルス COVID-19」