陸マイラーへ幸運のインボラ involuntary upgrade

特典航空券が使えない陸マイラー

学生の頃は格安航空券を探しては旅に出ましたが、社会人になってからは各航空会社の正規割引航空券を使うようになりました。そこにマイレージサービスの特典を加えてアップグレードしてもらうのが密かな楽しみになりました。この様に特典を使う、或いは追加料金を払って客の負担で座席をアップグレードしてもらうのはvoluntary upgradeと呼ばれるそうです。あまり飛行機に搭乗することなく、提携クレジットカードなどでこつこつとマイルを貯め、無料特典航空券や、無料特典アップグレードサービスに使う人は「陸マイラー」と称される様です。仕事で飛行機に乗るのも年に数回あるかないかになってしまい、専らクレジットカードからのマイルを貯める私もその「陸マイラー」の一人です。

たまに出かける仕事や家族旅行で、その特典を使おうにも、繁忙期などの理由のため全く使えない現状では、何のためのマイレージか考えさせられてしまいます。航空会社にとっては、ビジネスで頻回に利用してくれる客の取り込みのためのシステムであって、たまに使うか使わないかの客に便宜を図っても利益はないことは重々承知しています。何処かの記事で読んだところによると、「まだハワイ路線にジャンボ機が飛んでいた頃は、ビジネス客が貯めたマイルの捌け口として、ハワイ路線の特典航空券は意味があった。」とのことです。しかも大阪からは日に2本飛んでいた時もありました。今は、特に繁忙期には特典航空券の枠が本当にあるのか疑ってしまうほど僅かな数の設定なのだと思います。

その昔には往きの330日前に電話して、まず往きの特典航空券を押さえ、帰りの330日前に電話して、帰りの特典航空券を押さえるという方法も可能でした。受付開始時間から電話をし続け、ようやく1時間位経って繋がり、そこからオペレーターが出るまでさらに30分位待って、ようやく念願の特典航空券を家族4人のうち3人分だけ確保したことがありました。それが唯一の機会でした。以降は、この方法が使えなくなり、ますます使い勝手が悪くなり、実際、国際線では特典航空券を利用できたことがありません。数年前に仕事で使う2月の閑散期のNRT~LAX往復を取ろうとしたことが有りますが3ヶ月前でも無理でした。最近は専ら、期限切れになりそうなマイルをJALクーポン特典にかえています。使うところは、大阪ではホテル日航大阪のレストランしか無く、クーポン自体が期限切れとなってしまうことも頻回です。UAのマイレージは一定期間内にマイルの追加があれば実質無期限ですので、期限切れの心配がありません。

陸マイラーが憧れのインボラ 

一方、航空会社が予約を取りすぎた場合、いわゆるオーバーブッキングの状態の場合、一部のお客さんを、航空会社の負担で空いている上のクラスの座席に割り振るinvoluntary upgradeがあり、「インボラ」と呼ばれているようです。この「インボラ」も、当然、上級会員などのその航空会社にとってのお得意様から順に享受できる仕組みのはずで、我々陸マイラーには縁の無い話だと諦めていました。これまでにも、そんな幸運に巡り合ったことはもちろんありませんでした。

「インボラ」に該当するお客さんの選び出しについて、某航空会社の旅客運行部長をされていた方が自身のブログ「いずみ鉄道 社長ブログ」の中で興味深い記事を書かれています。現代航空旅行用心集その4がその記事です。勝手に要約させていただくと、営業上特定契約を結んでいる企業の関係者やその航空会社の上級会員がまず優先されるとのことで、予想通りで至極当然のことと理解できます。 それでも更にまだ「インボラ」の必要が生じた時、優先してノミネートされるのは、

1:事前座席指定を持っていること。
事前座席指定でお席が入っているということは、エコノミークラスでも比較的高い航空券をご購入されていらっしゃるということです。このような方がまずノミネートされます。

但し、次の基準を同時に満たしていなければなりません。

2:身なりがきちんとしていること。
上着にネクタイは必須です。ネクタイは無くても襟付きのシャツを着ていればOK。丸首にジーンズは対象外となります。運動靴やサンダル、半ズボンもダメ。そして旅なれた雰囲気がある方でしょうか。機内に入って、見るからにアップグレードと判るような場違いな方は選ばれません。以前にアップグレードと知ったとたん、カウンターで「やったー! ラッキー!」と大声で万歳したため、すぐにエコノミーに逆戻りしたお客様がいらっしゃいました。人は見かけで判断してはいけませんが、やはり外見は大事です。とくに外国旅行では。

3:子供連れでないこと。
子供連れはアップグレードの対象となりません。赤ちゃんでもダメですね。
いくらおとなしい子供でも、社内規定で12歳以下はダメと決まっている会社もありますので、無理ですね。

4:特別機内食(スペシャルミール)を頼んでいないこと。
意外に重要なのがこれ。旅慣れた方の中にはスペシャルミールを頼まれていらっしゃる方が多くいらっしゃいます。スペシャルミール(特別機内食)の解説は別の機会でいたしますが、例えば糖尿病食や菜食主義者(ベジタリアン)などです。こういう特別食は前日からすでに準備されているのが普通です。アップグレードをするためには上級のクラスで再度準備しなければならないため、チェックインの時点では間に合わないのが普通です。また、予約されたクラスで用意した特別食が無駄になってしまいます。従いまして、特別機内食を頼んでいたらアップグレードの対象からはずれてしまいます。食事はエコノミーで座席だけビジネスということは機内サービス上、受け付けることはありません。

5:ナイスな人。
これも意外ですが、重要なファクターです。ェックインカウンターで勤務しているのはたいてい若い女性です。好印象をもたれれば、カードが無くても旅慣れて無くてもチャンスはあります。

自分からアップグレードをきいてくる人、それも最初からインボラ狙いの人」は駄目な人の典型例だそうです。

3人まとめてインボラ PYからCへ

数年前の年末のニューヨーク旅行の際の話です。年始の成田への帰国便において、繁忙期ということでエコノミークラスにオーバーブッキングが生じるのではと、予約段階でうすうす予想はしていました。というのも、約4ヶ月前の予約段階でエコノミーはほぼ満席で並びの座席指定が不可能であったため、家族分は値段が高くなりましたがANAのweb siteにて正規割引航空券でプレミアムエコノミーの席を購入、座席指定もしておいたからです。その時点ではプレミアムエコノミーには空席がまだ結構ありました。そもそもプレミアムエコノミーは、空きがあれば上級会員がエコノミーから無償で上げてもらう席という意味合いもあり、わざわざ購入する人は少ないはずです。また、この時期にはビジネス客が少なく、観光客が多いのでしょう、ビジネスクラスも予約段階ではまだ席が沢山残っていました。違うクラスを同時に予約できないので、腰痛持ちの私自身のビジネスクラス正規割引航空券の予約は別に行いました。よって、予約システム上では、私は一人旅と認識されていたと思います。

さて帰国の日、時間に余裕を持って行動しないと落ち着かない性分ですので、朝7時半前にはホテルを出てタクシーでJFK空港へ向かい、ターミナル7に着いたのは8時前後でした。ANAのチェックイン業務はBritish Airwaysのカウンターで同社の現地職員によって行われている様です。出発3時間前にならないと業務は開始されない様で、少し待ちました。待っている間ANAの社員らしき日本人の方が手荷物に付ける名札を配って回られていました。手続が開始され、手渡された家族分の搭乗券の座席番号が若くなっているような気もしましたが、きっとCと印字されていたはずの搭乗券をよく確かめもしませんでした。ただ、その席は皆一緒ですかと担当窓口のお姉さんに尋ね、Yesとの返事をもらったのは覚えています。窓口の担当が日本人であれば申し添えてくれたかもしれませんが、こちらが既に知っていると思ってか、そのことには言及されず、淡々と、提携するBritish Airwaysのラウンジの利用券を家族全員分渡してくれました。PYもラウンジを使えて良かったくらいにしか思わず、家族の誰も幸運に全く気が付いていませんでした。結局、機内で座席に着くときに初めて知り、家族3人はCAさんに、本当にこの席ですかと確かめたとのことです。 帰国後、コンピューターを覘くと、 ANAより【チェックイン完了】のご案内 と題して、 ※ご予約頂いたクラスが満席のため、上位クラスへアップグレードしています。 とのメールが、送られて来ていましたので、空港での搭乗手続の前から確定していたようです。 勝手に想像するに、オーバーブッキングの座席数調整のためにY⇒PYへのインボラアップグレードを行い、その結果我が家もPY⇒Cへ押し出してもらったのでしょう。Y⇒Cへアップグレードする前に、ブッキングクラスが上のプレミアムエコノミー正規割引航空券購入者からまず順にCへアップグレードしていただいたのかもしれません。帰国後webで検索してみますと、ANAさんのプレミアムエコノミー購入で片道インボラアップグレードの体験談を散見します。ブッキングクラスも優先事項にされているのであれば、繁忙期にしか旅行できない陸マイラーにとっては、とても嬉しい扱いです。

ラウンジで呼ばれてインボラ CからFへ

セキュリティーチェックを済ませ、お土産も購入し、向かったBritish Airwaysのラウンジは広く、席数も多いのでゆっくりと出来て、おにぎりやインスタント味噌汁もありました。コーヒーを飲みながら新聞や雑誌をのんびりと読んでいると、放送で名前を呼ばれたうちの1人が自分でした。何か不都合でも生じたのかとラウンジの受付に行ってみました。そこで手持ちの搭乗券と交換で、新たな搭乗券を渡していただきました。Y→PY、PY→C、C→Fと行われたであろうアップグレードの玉突きの恩恵に与ることになりました。 粗相のない様に、控えめな客になりきって、人生最初でおそらく最後になるFクラスでのフライトを静かに楽しませて頂きました。恐れ多くて機内で写真は撮りませんでした。Cクラスのスタッガード仕様のフルフラットになるシートも往路で初体験して、そのプライバシーが良く保てる造りに感心しましたが、Fクラスのシートはさらに横幅にも余裕があり快適で申し分ないものでした。食事も、頂いたワインも美味しゅうございました。何よりも、CAさんたちが、常に目配りしてくれているのが良くわかり、Cクラスとはまた別世界であることが良く実感できました。 上級会員でも無い私を選んで頂いた理由を考えてはみましたがよく分かりません。年始のフライトで、ビジネス利用のお客さんが少なく、上級会員も少なかったのでしょう。視点を変えて、ANAさんがこれからも自社便を使ってほしい人を選ぶとしたら、と勝手に想像してみました。頻回に旅行し、他の航空会社を使っている人が該当するのでしょう。たまたまその1年間は3回渡米していました。パスポート情報を読み取る際に知ることは出来るでしょう。web予約の段階でUnited AirlinesのFFPであるマイレージプラスに、今回のフライトマイルを加算するよう登録しておきました。スターアライアンス内では、そのマイレージプラスのマイル残高や、前回旅行時のUA便のブッキングクラスの情報も共有できるのか知りたいところです。 家族分と予約を別にとったので、単に一人旅と見做され、それが功を奏しただけかもしれません。チェックインが遅いとアップグレードされ易いなどの噂もあるようですが、今回はチェックイン手続き開始直後に済ませていました。同じ様にアップグレードされた年配のお方も、私達のすぐ後で搭乗手続きをされていました。

非常口座席 今昔

バックパッキングで旅行していた頃は、もちろん格安航空券でした。カウンターで指定されたエコノミーの後ろの方の席に文句も言わず座っていました。仕事で時に海外へ出かける様になると、United Airlinesの正規割引航空券を主に使うようになりました。座席も「非常口座席」を空港のカウンターでリクエストしてみる様になりました。足を伸ばして座る事が出来ること、それだけで至福でした。運良く?空いていれば、その席にassignしていただけました。その際には、緊急の場合は乗務員の英語に従い、脱出の介助ができるかどうかを常に確認されました。当たり前のことですので、それが航空業界の常識だと信じていました。理由は分かりませんが、意図してこれらの席がブロックされているのか、カウンターでassignしてくれない時も勿論ありました。その時は飛び立って暫くしてから、乗務員に席を移動して良いか尋ね、承諾をもらって移動したこともあります。これらはずいぶん昔の話です。今では、非常口座席も上級会員にしか割り振らないとか、追加料金の対象にしている航空会社もあるようです。

2006年にJALのLAX→KIX便に乗った時(その後この路線は廃止、最近また復活しました)、非常口座席に小さな子供連れの母親が座っていて驚きました。緊急の場合、乗客の脱出を手助けできる人のみが座るべき座席に、まだ小さな子供及びその母親を座らせないのは世界基準だと思っていましたので、帰国後JALに問い合わせをしてみました。木で鼻を括った様な回答があったのみでした。国土交通省が何も決めていないので、JALもそのような扱い、制限をしない、とのことでした。非常時の安全確保について社内でも議論されることはなかったのか、航空会社としての安全に対する姿勢に疑問を感じました。

年月が経て事情が変わるとJALもようやく2009年から対応する様になり、現在はJALのweb siteには以下の様に記されています。

 国土交通省の通達により2009年4月1日から、お客さまの安全を確保するため、非常口座席には以下のすべての項目を満たすお客さまに限りご着席いただくこととなりました。(2008年7月3日通達発行、2009年4月1日施行)

当該通達に従いまして、非常口座席をご希望されるお客さまには以下の内容の確認をさせていただきます。ご協力をお願いいたします。

1.満15歳以上の方(15歳未満の方はご指定いただけません)
2.ご搭乗に際して付き添いの方や係員のお手伝いを必要としない方
3.航空機ドアの開閉等、緊急脱出の援助を実施することができる方
4.脱出手順の案内および乗務員の指示を理解し、他のお客さまへ口頭で伝えられる方
5.緊急脱出時に同伴者の援助をする必要がない方
6.緊急脱出の援助を実施することに同意する方

迅速な脱出の援助をしていただくため、非常口座席に着席されるお客さまには、万一の場合、客室乗務員の指示のもと、緊急脱出時の援助をお願いいたします。
なお、当てはまらない項目がある場合、非常口座席の着席ができません。出発当日、空港、客室においても同様の確認をさせていただきますがご了承いただきますようよろしくお願いいたします。