マメな豆の話
世界の豆食文化をたずねて
吉田よし子著
角川ソフィア文庫
平成30年11月25日初版発行
本書の構成は、第一章 豆と人間、第ニ章 ダイスは東アジアの食文化の横綱、第三章 豆の王国インドとその周辺、第四章 新大陸からの贈り物、第五章 野菜と果物としての豆たち、終章 豆と人間の未来となっています。
南アジアの料理に関心がある人は、第三章から読み始めてしまうと思います。同章は穀類と豆を混ぜて栽培する技術(混作)の話から始まります。インドで栽培される豆の種類に話が進み、1980年代の統計ではヒヨコマメ、キマメ、リョクトウ、マッペ(ウラド)で全体の8割弱を占めると記されています。それぞれの豆の食べ方等について記述が続きます。
ヒヨコマメ Chickpea(Chana チャナ)については、その粉ベサンを使ったものとして、ナムキーン、パコラ、ムティア、ベサンカバブ、ブンディなどが挙げられており、ロティやプーリも小麦の一部をベサンに置き換えて作ることもあると記載されています。ミャンマーではヒヨコマメの「きなこ」もよく使われるとのことです。
キマメ Pigeon pea(Toor トゥール、Rahar ラハル)については、サンバー(サンバル)とラッサムについての説明が続き、丸ごとではなく二つに割る加工を施した豆の利用の方が盛んな事、その加工技術の問題点にも言及しています。
リョウクトウ Green Gram、Mung bean (Moong ムング)については、ケジャリの話から始まり、日本でなぜ春雨の材料やモヤシで終わってしまい、豆そのものが食べる習慣がないのか考察しています。
マッペ、ウラド(と本書では記されていますが、上の3つにあわせて和名で記すならケツルアズキ) Black Gram (Urad ウラド、Maas、Mas マス)については、イドゥリ、ドーサ、アッパム、イディアッパム、パコラについて記され、ワーダ、ワダについても詳しく記されています。パパダムにも話が及びます。
レンズマメ、ヒラマメ Lentil (Musuro ムスロ、マスール)については、1996年の統計では全世界の生産量の約30%がインドとのことです。皮が柔らかく、火も通りやすいので、皮付きでも洗ってすぐに煮ることが出来、煮えるのも早いと紹介されています。この豆を使ったプラオの作り方も書かれています。
ホースグラム Horse Gram については、ミャンマーでペピザと呼ばれ、ゆで汁でのポンイェージーと呼ぶ豆いろり(だしの素)作りにページが割かれています。インドでもゆで汁でサアールというスープを作ることも調べられていました。
ガラスマメ Grass Pea ラチルスピー もそれに含まれる神経毒によって下半身麻痺を惹起する「ラチルス症」が紹介されています。
同じダルでも言語によって表現、表記が異なるので、頭の整理をしながら読んでいくと、ダルへの理解の手助けになります。上述の豆の名の表記は、本書には無いが理解のために追加したものもあります。