阪急宝塚線中津駅近くの中津商店街に、ネパール料理の「月と太陽」さんが開店されたとの事で、ディナータイムに伺ってみました。web上での紹介記事には「水牛専門店」とありましたので、期待が膨らみます。水牛の料理としては、メニューに、「グリル、チョエラ、スープカレー、ホルモン焼き、モモ」が載っていました。まずは「水牛のチョイラ」をお願いしました。長細く切った水牛の肉に玉葱と、肉玉葱炒めの様な体裁です。
ダルバートは副菜が5品か10品を選び、メインのマスはチキンカレーのままか、変更、または追加する仕組みとなっていました。副菜を10品、チキンカレーの代わりに水牛のカレーでお願いしました。何故かチキンカレーも付いてきて、
水牛のカレーは小さなカトリに別盛りで持って来て下さいました。メニューにはチキンカレーを水牛カレーに変更は+600円、チキンカレーに水牛カレー追加は+800円と書かれています。800円の有難い水牛ですので、食べ応えのある水牛の肉を期待していたのですが、小さな数片のみで、しかも肝臓などが入っています。個人的にあまり好みでないスープタイプで、肉の味を楽しむ事が出来ないばかりか、グレービー(スープ)の味のみが舌に残ります。バート(ご飯)にダルと一緒に混ざってしまうと、ダルの味が分からなくなります。
そのダルは、ムング Moong とマスールMasoor (Musuro) を使っておられるようですが、豆の形が殆ど残っていないシャバシャバのタイプで、量も少なめです。
10品の副菜も、無難な味付けの範囲内の様です。お店の棚に、大根のアチャールと、人参のアチャールを漬けておられるのが並んでいましたので、この2品は注目です。何かよく分からないものが一つあり、お尋ねすると、魚 Maachaとの事で、小学校の給食で食べて以来のメルルーサでした。タラ目は殆どが海水魚のはずですので、内陸国ネパールの淡水魚で似たようなものが有るのでしょうか。サグ(青菜炒め)もその場で炒めてもらえるのではなく、作り置きの様です。
もう少し水牛を試したく「水牛のモモ」も追加でお願いしてみました。2つのアチャールが添えられています。大きい方はピーナツと胡麻、小さい方はトマト、麻の実、ティンムルも加わっているとの事です。
ダルバートを頂きに、あちらこちらのお店に伺い始めた頃、あるネパールの方が仰られた言葉を鮮明に覚えています。「日本に来て食べたダルバートには、肉がほんの僅かしか入っていないのでがっかりした。しっかり量もあり、肉の味を楽しんでもらえるものを食べて欲しいと思い、それならば、自分でやろうと店を始めました。」という内容です。当時そのお店で供されていた、ダルバートに付いてきたマトンの写真です。
実際に、ネパールの方が熱意をもってダルバートを供されているお店の共通点は、マスがドライタイプです。巧みなスパイス使いで、肉の味を楽しませて下さっています。ドライタイプに変更しようとして、お客様の反対にあい、忸怩たる思いでスープタイプに戻さざるを得なかったお店もあります。
1回の訪問では分からない事もあろうかと、間を置かずランチタイムに再訪しました。副菜を5種で、チキンの代わりに、マトンと水牛の2種でお願いしました。追加料金は+1000円です。
別の小さなカトリで添えられたマトンは骨付きでしたが小片が2つのみ、
水牛はこの日はやはり内臓も入って数片のみ。たまたま初訪時が少ない肉量だったわけではなさそうです。
お店を切り盛りされているのはネパール人お2人ですが、ダルの内容は一緒で変わらないと仰っていました。
水牛の肉を北海道から冷凍にして仕入れておられるとのお話でした。webで検索してみると、「随想 山水記 白井隆監修」で「水牛のお肉」の話が記されていました。
水牛の仔牛で、オスが生まれたら、今は、肉用に育てて食べてもらう。
でも、水牛を始めて3年半、当初は手の打ちようがなくて、獣医さんに頼んで薬殺した。
事情は、こうだ。
オスの仔牛が生まれたら、初乳を飲ませてから売るか、あるいは、自分の牧場で去勢して、15か月から25か月くらい育てて、屠場に持ち込み、肉にしてもらって食べる、あるいは、販売する。これが、ホルスタイン酪農家の普通の手順だ。
ところが水牛の場合、屠場が受け入れてくれない。
一般的な牛は、ウシ科ウシ属。水牛は、ウシ科アジアスイギュウ属。動物というものは、属が違えば交配できない。つまり、まったく違う動物だ。牛の屠場は国が管理しており、ウシ科に関しては、ウシ科ウシ属を対象にしている。アジアスイギュウ属が持ち込まれることを前提としていないから、現場は自動的に、「受け入れられない」と対応する。当然のことだ。
農林水産省に問い合わせたところ、鹿と同様に対処してくれ、と。つまり、ジビエだ。鹿の屠場なら、北海道にはたくさんある。ところが、調べてみると、鹿は巨大なオスでもせいぜい200kg前後だ。屠場では、屠殺したのちに、吊るして加工する。鹿の屠場では200kgくらいの荷重に耐えるリフトはあるが、ウシや水牛はゆうに500kgを超える。理屈に合わない。
国家戦略特区のフードバレーとかち事務局に、屠場の規制緩和を申し入れた。やります、と言ってくれた。ここから先は、待つしかない。十勝が水牛産業に対して優遇、あるいは、規制緩和すれば、今後、水牛酪農に着手する人は、十勝に来ることになる。新しい地場産業として育つだろう。その点を理解してくれるように話した。
日本ではまだまだ育てる側も苦労されている「水牛」ですが、ネパールの食肉の消費としては最も大きく、特にカトマンズを中心としたネワールの食文化の中心とも言えます。そのネパールの食文化を広めて下さるとの期待も大きいのですが、ダルバートの水牛は、量が少なく肉の味がよく分からないまま、値段だけは高いものと思われてしまわないか、心配します。肉量たっぷりのドライタイプの水牛カレーをダルバートと一緒に供して下さる日を心待ちにしています。
月と太陽
大阪市北区中津3丁目18-18

ダルバートの本来の主役であるダルは、今週はチャナ Chanaですが、里芋が加わってとろみがついています。酸味を楽しむものが多いラインナップの中で、優しい味のダルが、口休めの役割を果たしてくれます。
マスは鶏の胸肉に、少しだけもも肉を加えたもので、同じKukhura ko Maas ククラ・コ・マスでも毎週味付けが変わります。ほぐれた胸肉には味が良く染み入っています。
タルカリの位置には、発酵乾燥野菜 Gundrukのスープ、グンドゥルック・コ・ジョルが、ささげ Bodi ボリと大蒜の茎葉 Hariyo Lasun ハリヨ・ラスンとの組み合わせで登場しました。Aalu Taama Bodi アル・タマ(発酵筍)・ボリの様な、酸味が活きたスープに仕立てられています。菜の花ではなく大根のグンドゥルックの方が酸味を味わうこの調理には適していそうで、そちらを用いておられます。檸檬も隠し味に使われています。
3種のアチャールは、まず果物を使った、檸檬 Kagati と干し葡萄 Kismis のアチャールです。干し葡萄の甘みが前に出ない様に、檸檬の酸味が上手く効いています。絶妙な組み合わせと味のバランスが楽しめます。ククリラムが少しだけ使われています。
トマト Golbheda を使ったアチャールも、毎回トマトの違った面が楽しめますが、今週は甘みよりも酸味を感じさせてくれる味付けで、マショウラ Masaura と和えてあります。
もう一つは大根 Mula を中心として、人参 Gajar、胡瓜 Kakro、えんどう豆 Sano Kerauです。
バートの上には、アスパラガス Kurilo と玉葱 Pyaaj の炒め物が載り、
定位置にパパドゥとサグ(青菜炒め)が控えます。デザートは、この猛暑の高温の中でも上手く発酵させるカドカさんの技がますます熟達してきた、バクタプル名物のヨーグルト、ズーズーダゥ Juju Dhau です。あるお客様がSNSで発信された後から密かに人気となった「ククリラム添えズーズーダゥ」にヒマラヤンハニーも垂らしてみました。
チヤも頂いて帰りました。
ランチタイムの遅い時間でしたが、店内はほぼ満席でした。メインはマトンで、ミニチキンカレーもつけて頂きました。
ダルはこの日はウラッド Urad とマスール Masoor と仰っていましたので、マスMas (Black Gram) とムスロ Musuro (Red Lentil) の優しい味の組み合わせでした。
グンドゥルックも登場し、
タルカリは茄子と南瓜でした。
開店したばかりということもあってか、大根のアチャールの酸味をはじめとして、まだ大人しめの味付けの様です。

マスは、骨付き、皮付きの山羊 Khasi、カシ・コ・マスで、山羊肉の美味しさを引き出すように、シンプルな、辛さ控えめの味付けです。
ダルも優しい味に仕上がるよう、マス Mas、ムスロ Musuro、ラハル Raharのミックスダルで、チョウリ Chauri(ヤクと牝牛の交配による牝)のギー Gheu とガイ Gai(牝牛)のギーが加えられ、ジンブー Jimbu も少し入っています。
タルカリは、冬瓜 Kubhindo、じゃが芋 Alu、大蒜の葉茎 Hariyo Lasun のタルカリです。こちらは冬瓜の優しい味を引き立たせるように、辛めの味付けになって、バランスがとられています。
果物のアチャール、今回は、パイナップル Bhuin Katahar とトウモロコシ Makai の絶妙な組み合わせです。もう少し酸味のあるパイナップルを想定した味付けだったとのことですが、甘みを感じるアチャールも良いアクセントになっていました。
大根 Mula のアチャールは、高い気温のせいで発酵が進むのが早く、酸味を楽しむことが出来ます。
もう一つのアチャールは、じゃが芋 Alu、えんどう豆 Sano Kerau、胡瓜 Kakro、人参 Gajarです。
バートの上にはチキン・チョイラが載り、
定位置にパパドゥとサグが控えます。サグ(青菜炒め)も、小松菜と空心菜のミックスと一工夫が加わっています。
デザートはズーズーダゥ、チヤも頂きました。
ゴーヤとトマトのタルカリ、
サグ(青菜炒め)は、蔓紫、空芯菜、金時草、ほうれん草、小松菜のミックスでした。
もう一つのタルカリは、夏野菜でもなく、ネパールにも無さそうな、椎茸とエリンギのタルカリです。
この日のマスは骨付きチキンでした。

今週の注目は鶏肉のアチャール、マス・コ・アチャールです。一度タンドールで焼いて油を落として香りをつけた鶏肉を、もう一度油を通すという手間をかけられ、以前とは異なる味付けで登場です。
もう一つの鶏肉料理であるカレー、ククラ・コ・マスは、それとバランスをとるように、シンプルなスパイス使いで仕上げられています。
南瓜の収穫時期ですので、じゃが芋、絹さやと一緒に、野菜の甘みを満喫できる、ファルシー・ラ・アル・パタロシミ・コ・タルカリとして登場です。
フルーツカボチャの輪切りが玉葱と一緒に、スパイス炒め、ファルシー・ラ・ピャーズ・コ・ブテコとして、ご飯(バート)の上に載っています。
トマトのアチャール、ゴルベラ・コ・アチャールはミニトマトの甘みが楽しめ、
大豆と発酵乾燥野菜のアチャール、バトマス・ラ・トリ・コ・グンドゥルック・コ・アチャールには、菜の花のグンドゥルックと共に大蒜の葉茎が使われ、大豆との食感の組み合わせが楽しめます。大蒜の葉茎、ハリヨ・ラスンは、ククラ・コ・マスとタルカリにも使われています。
ダルはタルカリの野菜の甘みの邪魔にならないように、また全体のバランスを考えて、マス・ラ・ムスロ・コ・ダルを選ばれた様ですが、ラハル・コ・ダルも候補だったなどと、カドカさんとダル談義です。ダルには何時も乍ら、ジンブーとチョウリのギーも使われています。
定位置にはパパドゥと青菜炒めサグ・ブテコが控えますが、パパドゥも今週から種類が変わっています。デザートは、気温の上昇で発酵が早くなったズーズーダゥです。
マスはマトンカレーで頂き、ダルはラハルとチャナのミックスとの事でした。チキンのパクチー炒めも添えられ、
茄子とじゃが芋のタルカリは茄子が美味しく仕上げられ、
胡瓜とじゃが芋のアチャールは胡麻が良く効いています。
青菜炒めとミックス野菜のパコダも含め、どの品も美味しいのですが、この日のお気に入りは、椎茸、万願寺唐辛子、トマトのアチャールでした。
キランさんに椎茸はネパールでも食べるのですかとお伺いしたところ、椎茸はあまり無く、違う種類のキノコなら食べますとの事でした。私が小さい頃、田舎の家の裏庭には椎茸を栽培する木が並べられ、菌を植え大きく育つと採っていた覚えがあり、ネパールでも簡単に栽培できそうなのにと、意外な感じを覚えました。web site を巡ってみると、椎茸栽培を導入して田舎の農家の人の現金収入にという流れは、ネパールでも過去も今も有る様です。
チヤを頂いて帰りました。
檸檬 Kaagati ko Achaar は、頂いたことのある「ズーズーダゥ」さんや、「パリワール」さんのものとはまた一味違い、色々な作り方があることを楽しむことが出来る一品です。お替りも頂きました。
大根 Mula ko Achaar は、約1ヶ月発酵させたものとのことで、ダルバートに添えられる1週間ほどの発酵のものと食べ比べが出来ます。好みが分かれるかも知れませんが、この1ヶ月ものは大根の漬物好きには堪らない一品です。
大蒜 Lasun (Lasoon) ko Achaar は、粒のままの形で仕上げられ、ほくほくとした食感です。
この3つはそれぞれに味付けも異なり、更に人参 Gajar ko Achaar も仕込み予定との事です。
マスをマトンでお願いしました。
追加に何か出来ますかとお伺いしたところ、他のお客さんから丁度シークカバーブの注文が入ったので、どうですかと勧められました。ネパール料理の一品を期待していたのですが、折角ですので美味しく頂きました。ダルバート以外のネパール料理もさり気なく登場する日を待ちましょう。
最後にチヤも頂いて帰りました。
そして今回のダルバートです。
マスはドライタイプのチキンで、
ダルが前回は「豆カレー」という印象でしたが、今回の方が豆の味を楽しめる味付けです。
ドリンクも付いていますので、ラッシーをお願いしました。