大根と山桃のアチャール @ ネパールのごちそう jujudhau ズーズーダゥ(池田市)

池田市の「ネパールのごちそう jujudhau ズーズーダゥ」さんで供される、週末のスペシャルダルバートのマス、ダル、タルカリ、アチャールには、一品毎に、カドカさんとジットさんの細かい配慮と工夫が隠されています。マスは、ククラ・コ・マス Kukhura ko Maas です。ハリヨ・ラスン Hariyo Lasun(大蒜の葉)をよく用いられていますが、この日は鶏肉が骨付きということで骨無しの時との味の違いを楽しめます。ダルは、使う豆の組み合わせが毎回変わります。マス Mas、ラハル Rahar、ムスロ Musuro、チャナ Chana、ガハット Gahat と5種類揃い踏みで、チョウリ Chauri のギー Gheu も加わり、豆の甘みが楽しめるダルに仕上がっています。タルカリは、新じゃが、小松菜、大根です。じゃが芋は皮つきを用いられ、ダルが甘い分、少し辛めの味付けです。小松菜はネパールにも有るのでしょうか、近いものは、Rayo ko Saagでしょうか。アチャールの一つ目は、大根と山桃のアチャール Mula ra Kafal ko Achaar です。発酵を進めた大根のアチャールは、その深い味わいに魅了されますが、この日は、山桃の酸味を活かすために、酸味を控えた発酵の浅い大根を組み合わせておられます。二つ目のパイナップル Bhuin Katahar ブイ・カタハールのアチャールは、以前にも登場のネパールの茶胡麻 Khairo Til カイロ・ティルが味を引き締めています。他の胡麻には無い茶胡麻の粘り気が、フルーツのみずみずしさと絡み合っています。三つ目のトマト Golbheda のアチャール、毎回味が変わりますが、今回は目を細かく下拵えすることによって、トマトの甘みが十分引き出されています。バート(ご飯)の上には、オクラ Ramtoriyaと玉葱 Pyaaj のスパイス炒めが載っています。パパドゥと青菜炒め(小松菜)が定位置に控え、前日の宴で余った、猪 Bandel のブトゥワBhutuwa もダルバートと一緒に頂きました。デザートは、蕎麦 Phaparとシコクビエ(四石稗)Kodo を使ったプワ Puwa でした。ネパールでは6月29日がAsar Pandra、田植えをお祝いしダヒチウラ Dahi Chiuraを頂く日で、National Rice Dayでもあります。このプワは田植え時期の田圃をイメージして盛り付けられています。茶色が土、緑が苗、白色のカシューナッツは虫をイメージとのことです。ギー Gheu やレーズン Kismis も使われている様で、知らずに食べたら、蕎麦と四石稗から作られていると分かりません。シコクビエ Kodo (finger millet) のプワは検索してもなかなか見つからず、米粉のプワについてBoss Nepalの「Rice Puwa」の記事に書かれていました。

One of the popular snacks in western Nepal, especially in Dang, Rice Puwa is many people’s favorite as it is tasty, healthy and also satisfies hunger. Made with rice grains, Rice Puwa can also be eaten as an alternative to rice as it is similar to rice in terms of gratifying hunger.

In most of the other cultures and places, Puwa is usually made with Suji or Semolina. It is also heavy due to the rice it contains so it is used more as a snack, afternoon snack or as an alternative for dinner, together with a fried vegetable or curry or pickles. The process of making Puwa is easy and comparatively fast and also not much ingredients are required for making Puwas.

唯一、「Beyond the Biophysical: Knowledge, Culture, and Power in Agriculture and Natural Resource Management.  German Laura, Ramisch Joshua J., Verma Ritu (Eds.)」の中の、Chapter 4 「Beyond Biodiversity: Culture in Agricultural Biodiversity Conservation in the Himalayan Foothills. Laxmi P. Pant and Joshua J. Ramisch」で、民族の違いによる農作物、穀物の使い方の差異が記述されています。finger millet の在来種の5種類 (Samdhi kodo、Jhyape、Lapre、Kalo dalle 、Seto dalle) のうち、Samdhi kodo (Juwai kodo) のみが、対象の2民族でロティroti やプワ puwa に使われており、1つの民族では Jhyape が、他方の民族では Lapre がディロ dhindo に使われるとのことです。後者の民族は、Lapre の他に Kalo dalle と Seto dalle をロキシー Raksi 作りに使い、5種全部を jand (beer) (チャン Chang) 作りにも使うと記されています。

最後にチヤも頂きました。

お店で頂ける料理の数々は
→「jujudhau ズーズーダゥ(池田市)ネパールのごちそう」

ネパールのごちそう
jujudhau
ズーズーダゥ

池田市室町1-3
https://ja-jp.facebook.com/jujudhaunepal/

山桃と梅のアチャール @ パリワール Pariwar (生駒市)

お店のFacebookで、山桃と無農薬の梅をそれぞれアチャールにした旨告知されていましたので、早速生駒市のネパール料理店「パリワール Pariwar」さんに伺いました。ベジのダルバートでお願いしました。お目当ての梅のアチャールは辛甘さが、山桃のアチャールは酸味が活かされた味に仕上がっていました。ミントのアチャールも並んでいます。ダルやバート、他の野菜と一緒に美味しく頂きました。食後に、畑から採ってきたマクワウリ(真桑瓜)が有りますとお声がかかり、是非にとお願いしました。子供の頃よく食べていたという話で盛り上がり、しばらくマクワウリ談義となりました。農林水産省のweb site 、「マクワウリとはどのような野菜ですか」からマクワウリの説明を引用してみました。

マクワウリはウリ科キュウリ属の一年生草本です。東アジアで発達した東洋系のメロンの仲間で、日本へは2000 年以上前に中国や朝鮮半島から伝来したとされます。「古事記」や「万葉集」にも記載があり、古くは‘ウリ’といえばマクワウリのことを指し、カラウリ、アジウリとも呼ばれていました。
マクワウリの名前は美濃国真桑村(現、岐阜県本巣市)が特産地と知られたことによります。果形は丸形から円筒形、俵形、扁円形などさまざまで、重さは300 グラムから1キロ程度です。果皮の色は白、黄、緑で、多様な溝や斑紋があります。
肉質はサクサクとした歯ざわりのものから柔らかいものまであり、西洋系のメロンに比べ甘さ、香りは多くないですが、さわやかな風味があります。
かつては銀マクワ、甘露、梨瓜、悠紀、黄金、成歓など多くの地域で独特の品種が生産されていました。しかし、1950 年代に入ってマクワウリとヨーロッパ・カンタロープとの一代雑種品種プリンスが普及し、さらに多くのハウス・メロンと呼ばれるものがこれに続いて育成されましたが、その後生産が減少して、現在では、地域的にわずかに生産されているだけのようです。

7月2日からの新しいメニューも出来上がっていました。

パリワールさんで頂ける美味しい料理の数々は
→「パリワール Pariwar(生駒市)」

PARIWAR パリワール

生駒市小明町155-4
https://ja-jp.facebook.com/Pariwar.nara.ikoma/

ダヒチウラ Dahi Chiura @ ネパールのごちそう jujudhau ズーズーダゥ(池田市)

6月29日はネパールでは、Asarアサール月の15日にあたり、Asar Pandraとしてお祝いし、ダヒチウラ Dahi Chiura を食べる習慣があるそうです。因みに2015年のAsar Pandraを説明したKathmandupostの記事では、

People across the country celebrated Asar Pandra, also known as Ropain Diwas, by planting paddy in their fields on Tuesday.

The day, which usually falls on the last week of June, is also observed as National Paddy Day. The celebration generally includes singing of traditional Asare Bhaka, dancing, splashing mud at each other and a feast of beaten rice and curd popularly known as ‘Dahi-Chiura’.

The day has a significant meaning in the country as paddy accounts for a larger portion of agricultural production in the country.

と紹介されています。池田市のネパール料理店「ネパールのごちそう jujudhau ズーズーダゥ」の店主カドカさんから、是非ダヒチウラを食べて下さいとのお誘いがありました。シンプルなダヒチウラを予想していましたが、他のお客様の尽力により、鹿と猪も料理に加わり豪華なサマエバジ Samay Baji で登場です。チウラに振りかける砂糖が添えられ、その上からダヒ(ヨーグルト)をかけて頂きます。ロティも焼いて下さいました。中央の2色のチウラを取り囲むように、10時の位置のダヒから時計回りに、猪のブトン(肝、肺、胃)、トウモロコシのアチャール、
チャナ豆と大蒜の葉のタルカリ、
鹿肉のセクワ、じゃが芋のアチャール、
ダルマート、
青菜炒め、
鹿のブトン(肝、肺)、
カリフラワー、人参と唐辛子のアチャールが並びます。
このアチャールに仕立てられたカリフラワーの発酵具合が堪りませんでした。

サマエバジに合うのはネパールではチャンと言うことで、他のお客様が持ち込まれた「にごり酒」や、ロキシーを使った山桃のカクテル、山桃のラッシーなども登場し、まさしくお祭りの宴の体を成しており、主役がダヒチウラであったことを忘れてしまいそうでした。

一つ疑問が湧きます。Asarアサール月の15日は、毎年だいたい同じ6月29日頃になるはず、ということは毎年田植えの時期は変わらないのでしょうか。日本では温暖化に伴い、暑さに強い米への品種改良が進み、それら晩生種に切り替えて栽培されるようになると、田植えの時期が遅くなってきます。一方で、コシヒカリなどの人気品種はそれらに比べ早生が多く、そちらを選択して栽培する農家も出てきます。同じ地方でも、田植え時期が選択する品種によって大きく異なるというのが、日本の米栽培の現状です。ネパールの米栽培の課題の一つが生産性の向上、及び消費者の好みの変化に伴う品質の改善で有り、それを目的とする品種改良や耕作支援も行われており、従来種と田植えの時期が変わらないのかが知りたいところです。

RICE VARIETAL MAPPING IN NEPAL: IMPLICATION FOR DEVELOPMENT AND ADOPTION Government of Nepal, Ministry of Agricultural Development, Department of Agliculture, Crop Development Directorate
の記述を少し拾ってみました。

2.5.1 National Rice Day

Recognizing the importance of rice in different aspects of life, the Government of Nepal on 14th December 2004 (29th Mangsir 2061 B.S.) officially declared Asar 15 (June 29) of each year as “National Rice Day” with the aim to create awareness about the importance of rice in the national economy and general well being of the people in Nepal. According to Hindu cultural norm, Ashar 15 is considered as the auspicious day to start rice transplanting for the year. The day also marks a famous festival which is celebrated by singing folk songs, dancing and eating flattened rice mixed with curd. The recipe is popularly called as “Dahi Chiura”. (略)

2.5.2 Fine and Aromatic Rice Mission

Nepalese food habit is being gradually shifted towards fine and aromatic rice from coarse rice. As a result rice market transaction is moving to the fine rice. The rice traders try to sell even cheap coarse rice converting into fine rice through high degree of policing for higher price. These days rice traders are attracting consumers by branding any type of rice as Jiramasino (fine rice). Fine and aromatic rice in the Nepalese super market and departmental store is on the rise for past few years. At this backdrop, considering the increasing demand of fine and aromatic rice, GoN has launched the first mission program on “Fine and Aromatic Rice” in 20 districts (Terai-17 and hills-3) from the year 2015. This mission program aims at increasing area, production and productivity of fine and aromatic rice in Nepal and reducing imports. This program targets to cultivate fine and aromatic rice in 7,500 ha and attain yield at 3 t/ha. The major activities of this program are 50% subsidies in foundation seed, 75% in commercial or improved seed, 100% in green manure (Sesbania aculeata) crop seed
and provision of Zinc Sulphate for the reclamation of Zinc deficiency in rice field.

お店で頂ける料理の数々は
→「jujudhau ズーズーダゥ(池田市)ネパールのごちそう」

ネパールのごちそう
jujudhau
ズーズーダゥ

池田市室町1-3
https://ja-jp.facebook.com/jujudhaunepal/

スパイス堂 / ダルバート食堂 (大阪市中央区)

ダルバート食堂の遼さんが計画を練っておられる新展開のまず一歩、「スパイス堂」が、6月23日と24日に大阪地下鉄谷町線谷町六丁目駅近くにプレオープンしました。6月28日から正式にオープンですが、当面はスパイスなど物品の販売のみで、飲食の提供はもう暫くしてからになりそうです。ネパール料理に限らず、各国料理も頂けるとのことですが、将来的には、、、遼さんの目指すところは一点です。店内の内装は自ら行われたとのことです。各種スパイスが取り揃えられ、ダルや米も並びます。冷凍庫には、ハラール認証の山羊肉なども入っています。この日はダルとスパイスを購入しました。

【追記】8月1日から飲食部門も開始されました。
お店で頂ける美味しい料理の数々は →「スパイス堂(大阪市中央区)」

スパイス堂

大阪市中央区谷町6丁目13-6

https://twitter.com/osaka_spice_do
https://www.instagram.com/spice_do/
https://www.facebook.com/spicedou/

ダルバート食堂の方は、ラビンさんがしっかり切り盛りされています。ある日の日替わりはポークでした。ラビンさんと、同じくネワール族のサルーズさんに、どうしても気になるネパールの豚肉事情をいろいろ聞かせて頂きました。別の日は、砂肝のチョイラとタカリダルバートを頂き、ネパールの雨季の話などを伺いました。

お店で頂ける美味しい料理の数々は→「ダルバート食堂(大阪市中央区)」

ダルバート食堂

大阪市中央区内久宝寺町3-3-16
http://dalbhat-shokudo.com/
https://twitter.com/dalbhat_nepal

トゥクパ Thukpa @ ターメリック Turmeric (西宮市甲子園口)

JR甲子園口駅近くのネパール料理店「ターメリック Turmeric」さんのカナメラ(毎月第2、第4土曜日、ターメリックだけのバル)に、この日はトゥクパ Thukpa が初登場です。久しぶりに2人で伺いましたので、カザセットをまずお願いし、車の運転が無いので、ロキシーのソーダ割りでスタートです。チウラを取り囲む様に、1時の位置のケラウ(豆)炒めから時計回りに、マトンチョイラ、マトンホルモン炒め、チキンホルモン炒め、サグサンデコ(ほうれん草和え)、小魚のアチャール、枝豆サンデコ、胡瓜とじゃが芋の和え物が並びます。本日のメニューに書かれているカザセットより一品多いです。気付いて店主キランさんとお話しすると、遊び心で、こっそり一品追加されている様です。その日に単品としても登場しない、カウンター上にも並んでいない一品です。この日はその一品が、小魚、マチャ・コ・アチャールでした。逆に一品、アンダ(卵)が無かったのは、単に添え忘れで、すぐに持ってきて下さいました。お決まりの如くアル・タマを単品でお願いし、トルペ(マトンホルモンのトマト煮込み)も頂きます。念願のトゥクパは、野菜がたっぷり頂け、マトンホルモン入りです。お替りをお願いしたい位の美味しさでした。500円(税別)のセットからは、チキンカレー炒め(ブテコ・ククラ・コ・マス)、ムライ(ブジャ)、ムラ・コ・アチャールのセットをお願いしました。ロキシーを2杯ほど頂いた後は、ククリラム・ラッシーです。スープモモも頂き、パニプリのヨーグルトバージョン、ダヒプリもお願いしました。ハルワとチヤで締めました。

ターメリックさんで頂ける美味しいネパール料理の数々は
→「ターメリック Turmeric(西宮市甲子園口)

ターメリック Turmeric

西宮市甲子園口2-24-28
https://twitter.com/turmericrest1
http://www.turmeric-kiran.co.jp/

亜州食堂 チョウク CHOWK(大阪市福島区)

大阪市福島区の「亜州食堂 CHOWK チョウク」さんを初めて訪れました。ディナータイムでしたので、「普通におまかせコース」をお願いしました。キャベツのクートゥ、チキン、ビーツの前菜3種から始まり、タイ料理の海老、烏賊入りトムヤムタレ Tom Yum Talay (Spicy Seafood Soup)、同じくタイ料理のヤムムーヤーンYum Moon Yang (Grilled Pork Salad)ベンガル料理のマトンマサラ Mutton Masalaと続きました。追加でマレーシア料理のミーゴレンママッ Mee Goreng Mamak もお願いし、最後にチャイも頂きました。しっかりと泡立てをして下さいました。地震からまだ数日しか経っていなかったこともあり、他のお客さんの出足は悪く、ゆっくりと、お店の方々と旅行に関する楽しい話をしたり、料理の食材を教えて頂いたりすることが出来ました。お陰で、この日のクートゥ Kootu にも用いられていた豆トゥーランダル Toor Dal が、ネパール料理のダルによく登場するラハルダル Rahar ko Dal である事に、今更ながら気が付きました。Mee Goreng Mamak のママッとは、マレーシアに住むイスラム教のインド人の意味と教えて頂きましたが、話に夢中になり、Mutton MasalaとMutton Bhunaの表現の違いを尋ねるのを忘れてしまいました。

JR東西線新福島駅近くのお店で頂ける、美味しい料理の数々は
→「亜州食堂 チョウク CHOWK (大阪市福島区)」

亜州食堂 チョウク CHOWK

大阪市福島区福島2丁目4-17

http://chowk.pya.jp/
https://twitter.com/chowk_asia

THE ASCENT OF THE EVEREST BY JOHN HUNT エベレスト初登頂 ジョン・ハント

THE ASCENT OF THE EVEREST
JOHN HUNT

エベレスト初登頂
ジョン・ハント著
吉田薫訳
エイアンドエフ
2016年8月10日初版発行

訳者あとがきにて、この本が出版されるに至った経緯を記されています。

一九五三年五月二十九日、エドモンド・ヒラリーとテンジン・ノルゲイが、世界で初めてエベレスト登頂に成功し、遠征隊の隊長を務めたジョン・ハントが帰国後わずか一ヵ月で ”早く伝えてほしいという要望に駆り立てられるように” 書き上げた〈The Ascent of Everest〉は、早くもその年の秋にイギリスで刊行された。そして、日本でも登頂から一年を待たずに、邦訳(『エヴェレスト登頂』田辺主計・望月達夫訳、朝日新聞社刊)が出版されている。世界中の人々が当時、夢中になって読んだというその名著が、日本では長らく絶版となっていたため、このたび、あらためて二〇一三年版から翻訳出版する運びとなった。それが本書である。

遠征の準備から登頂、帰国に至るまでが詳細に記述されています。どれだけ、隊員とシェルパが一致協力して、ルート工作や上のキャンプへの荷上げなど献身的な労務を繰り返さねばならないか、組織としての見事なチームワークがよく読み取れます。著者は、最後の「回想」で

これまでの遠征隊は、到達した高度はともかく、それぞれが経験を積み重ねてきたことに意義があったのであり、この経験が相当な高さに積み上げられていなければ、この山の謎を解くことはできなかった。このピラミッドのように築き上げられてきた経験こそが、一切の鍵を握っていたのである。つまり、このピラミッドがある高さに達していなければ、どこの登山隊が全力であたっても登頂は果たせなかった。そう考えると、これまでの遠征隊は失敗したのではなく、むしろ前進したことになる。その前進を受けて、昨年の冬、われわれは再びエベレストに挑む準備に入った。その頃には、長年にわたって登山家を退けてきたあの山の ”守り” がどういうものなのか、以前にはわからなかったことがかなりわかっていた。あとはただそれを検討して、正しい結論を導き、エベレストと闘うために必要な物と人を備えた遠征隊を送り出すだけだったのである。われわれ、一九五三年エベレスト遠征隊は、先人たちとこの登頂の栄光を分かち合えることを誇りに思っている。

と、過去に敬意を払い、科学的な根拠をもとに周到な準備をすることの重要性を述べています。エドモンド・ヒラリーは「2001年版あとがき」で、

多くの優秀な遠征隊が登頂に失敗していたときに、われわれはなぜ成功できたのか。まず、われわれは現在の水準に照らせば特に優れていたわけではないにせよ、有能な登山家たった。組織は盤石で、適切かつ充分な装備を持っていた。生理学者は大量の水分を摂ることを力説し、われわれはそれに従った。それでもわたしの体重はベースーキャンプを設営したときから下山までに10キロ近く減っていた。エベレストの頂上に達して生き延びることが果たして人間の力で可能かどうかは、生理学者にもわかっていなかったので、それもわれわれが乗り越えなくてはならない壁だった。

 われわれは確かに健康で、強い意欲をもっていた。われわれの酸素補給器は不安定だったが、充分に役に立った。そして、ちょうどよいときに天候に恵まれた。つまり、成功はさまざまな状況が重なった結果だったのた。わたしは、ある意味で、エベレストは登られるのを待っていたような気がしている。そして、タイミングよくそれができる用意があったのが、われわれだったのだ。

と、それまでに積み重ねられた高所の生理学・医学を念頭においた準備に言及しています。本書の資料として、「装備」「酸素」「食事」「生理学と医学」の各項目が詳細に解説されています。

某「登山家」がエベレストで遭難されたとのニュースを目にして、発売当初に既に読んでいた本書を改めて読み直してみました。「有能な登山家」でさえも、シェルパや隊員全体の協力が不可欠な世界としか思えないエベレストで、「単独」を標榜することに拘らざるを得なかったことが悲劇の始まりだったのでしょうか。

The Himalayan Times の記事を読むと悲しくなります。

According to Tikaram Gurung, Managing Director at Bochi Bochi Treks, Kuriki along with four Sherpa guides had headed to the higher camps to make the final summit push on Mt Everest.
略)
Kuriki reportedly wanted to make a solo attempt on Mt Everest without using Sherpa support and bottled oxygen this season.

ネパールではエベレストを含む山々での「単独」登山は、既に政府によって禁止されていたはずです。

One of the major changes in the regulation is the mandatory provision of taking guides while climbing the mountains, including the world’s highest peak. “From now on, foreign climbers will be banned from making a solo attempt on Mt Everest,” said Neupane. It will ensure foreign climbers are in safe hands of Nepali high-altitude guides or climbers. Besides, it also means more jobs for Nepalis, said government officials. With the rise in the number of solo climbers on Mt Everest, the number of accidents has also increased in recent times. Vladimir Strba, 49-year-old Slovakian climber, and Swiss alpinist Ueli Steck died on Everest while making a solo climb this spring season (April-May).

http://kathmandupost.ekantipur.com/news/2017-12-29/govt-comes-up-with-stringent-safety-rules.html

 

山桃のアチャール Kafal ko Achaar @ ネパールのごちそう jujudhau ズーズーダゥ(池田市)

季節の食材を使った池田市の「ネパールのごちそう jujudhau ズーズーダゥ」さんのスペシャルダルバート、今週は山桃が登場しました。お店のFacebookで

『カ〜ファル パキョ〜カ〜ファル パキョ〜
素敵な黒い鳥のさえずりです♡
ネパールでは春の稲刈りが終わる頃…
真っ赤な山桃が籠いっぱいに
『山桃が熟れたよ山桃が熟れたよ〜』と♡

と、ネパールの山桃と鳥の鳴き声の紹介をされていました。Boss Nepalの「Kafal berry」の記事で、その鳥の鳴き声と山桃売りの掛け声の詳細な記述があり、

The red colored berry that grows in the central Himalayas, mostly in Nepal, India and some parts of China, Kafal has been able to lure most of the people who have tried this once. In the streets of Kathmandu, we can hear the street vendor shouting and notifying people about the arrival of kafal in his deep and loud voice crying ‘Kafal aayo’ (Kafal has come). Within few minutes, he is surrounded by a group of children and grownups interested in buying the kafals he has brought carrying in a woven bamboo basket.

”kafal pakyo kafal pyako (berry is ripe)”「山桃が熟れたよ」の鳴き声にまつわる、物悲しい言い伝えも記されています。

A Nepali Barbet sings ‘kafal pakyo kafal pyako’ (berry is ripe) towards the end of spring when the berry ripens. According to the legends and stories, this song addresses a sentimental tale of brother and sister who lived in the mountains long ago. The brother goes away to join the army leaving his sister along and before he leaves, he makes a promise to his sister that he would return every year if she sends him a message during the season when the kafal fruit ripens. He, however, gets killed in a battle and never returns. The sister still sends her message every year at the time when the berry ripens with the hope of her brother returning until her time of demise. It is said that she returned as a Barbet in her next life and continued sending the same message which we today hear the Nepali Barbet singing.

Also another tale connects Barbet and Koili bird together saying that when Barbet went in search of her brother, the cuckoo heard it and responded with ‘koho’ (who is it?). There are many forms in which the story is depicted and although the tales vary from one locality to another, the craze and wait for the kafal fruit stays the same.

その山桃はアチャール、カファル・コ・アチャールとして、またチャトニーとして登場です。同じ山桃を Achaar に仕上げるだけでなく、火の通し加減や香辛料を変えてもう一品も仕上げ、食べ比べをさせて下さるという、カドカさんとジットさんの芸の細かさに脱帽です。アチャールとチャトニという言葉をどう使い分けておられるのかも尋ねました。どうやら、よりよく火を通して保存のきく品に仕上げたのがチャトニの様です。もう一つのアチャールは、荏胡麻のピセ・コ・シラム・コ・アチャールです。荏胡麻もお馴染みになってきましたが、前回登場時とは別の味わいです。マスはククラ・コ・マス、ダルはマス・ラ・ラハル・コ・ダルです。タルカリは、ひよこ豆とじゃが芋のチャナ・ラ・アル・コ・タルカリで、いつも乍ら優しい豆と芋の味を楽しめます。バートの上には、木耳(きくらげ) Thalthaley chyauと獅子唐の、タルタレ・チャウ・ラ・ハリヨ・クルサニ・コ・サデコが載っています。

素朴な疑問がまた湧いてきます。木耳(きくらげ)はネパールでよく食べられているのでしょうか。M.K. Adhikari et al.  Ethnomycolgical Knowledge on Uses of Wild Mushrooms in Western and Central Nepal.  Our Nature (2005) 3:13-19には、民族(カースト)によってはキノコは食べないと書かれています。

A notable difference between the tribes on uses of mushrooms was observed.  The Brahmins especially elder ones do not eat mushrooms

しかも木耳 Auricularia auricula-judae はあまり美味しくないと見做されていた様です。

Auricularia auricula-judae, (略)were considered not so tasty or good for edible purpose.

カドカさんが仰るには、キノコも今はネパールでも結構食べるとのことです。木耳は中華料理の食材としても使われるでしょうから、タメル地区のチャイナタウン化を見ると、既に浸透していそうな気もします。

定位置にパパドゥとサグ・ブテコも添えられています。丁度、ゴルベラ・コ・アチャールとアル・コ・アチャールが出来たてで、小さなカトリに入れて味見用に添えて頂きました。デザートのズーズーダゥも、山桃バージョンです。ピカ・チヤを最後に頂きました。

お店で頂ける料理の数々は
→「jujudhau ズーズーダゥ(池田市)ネパールのごちそう」

ネパールのごちそう
jujudhau
ズーズーダゥ

池田市室町1-3
https://ja-jp.facebook.com/jujudhaunepal/

コチュロティ Kachur Lati @ ラベア RABEA(奈良市)バングラデシュ料理

ラマダンも終わったある日に、奈良市の「バングラデシュレストラン ラベア」さんに伺いました。この日も美味しい料理をおまかせでお願いしました。最初に美味しいマンゴーが手に入ったとのことで、出して下さいました。ご飯はキチュリが少し残っていたようなので、炊きたてのライスと一緒に盛って頂き、チキンのローシュに、海老のローシュ、バングラデシュの野菜、コチュロティ、さらにダルが登場しました。今回も手食で頂きました。コチュロティKachur Lati を初めて頂きましたが、日本の芋茎(ずいき)に相当する、Taro 里芋の葉柄の様です。ラベアさんが仰るには、バングラデシュの代表的な魚のイリシュ Ilish やイリシュの頭、海老などと一緒に調理するとのことです。是非、イリシュと一緒に調理したものも頂いてみたいものです。辛めに味付けして頂いたようで、辛くないですかと尋ねて下さいましたが、丁度良い塩梅でした。

最近「ズーズーダゥ」さんのネパール料理で何度か芋茎のタルカリ、Karkalo ra Gaaba ko Tarkari を頂く機会が有りましたが、他の野菜と一緒に優しい味を引き出す料理でした。このバングラデシュ料理の芋茎は、それだけで存在感のある野菜の一品に仕上がっています。そこで、バングラデシュとネパールのTaroは一緒なのか、違うのか疑問が出てきました。Genetic Diversity in Taro, and the Preservation of Culinary Knowledge.  Peter J. Matthews.  Ethnobotany Research & Applications 2: 55-71 (2004) に、分布の図を見つけました。Colocasia esculenta (L.) Schottは全世界に広がり、野生種のC. fallax Schottが主に北インドに、同じく野生種のC. affinis Schottが主に北インドからタイにかけて、さらにベンガル地方には稀な野生種C. virosa Kunthが分布とのことです。実際にバングラデシュとネパールで栽培されているTaroの差異をよくご存じの方から話を聞いてみたいものです。同じ芋茎なのか、違う芋茎なのか興味津々です。後日、ネパール料理でも芋茎をスパイシーな味付けで調理するのかを「ズーズーダゥ」さんで尋ねたところ、勿論有るとの事でした。そちらも是非頂きたいものですが、ネパールでは一度乾燥したものを使うことが多い様です。今回頂いたのは冷凍で輸入されたもので、乾燥はしてなさそうでした。

因みにColocasia esculenta (L.) Schottは日本では「里芋」、日本から東南アジア、インドネシアまでに分布しているのが C. gigantea Hook. f. で「蓮芋」です。日本の「ずいき」は一般的には里芋の芋茎、「赤ずいき」は親芋子芋兼用品種の「唐芋」C. antiquorum と、親芋用の品種の「八つ頭」の芋茎、「青ずいき」は蓮芋の芋茎です。

最後に飲み物も頂きました。お店で頂ける美味しい料理の数々は
→「バングラデシュレストラン ラベア RABEA(奈良市)」

バングラデシュレストラン
ラベア
Bangladeshi Restaurant
RABEA

奈良市南魚屋町6-1-1

茄子のアチャールとタルカリ @ ターメリック Turmeric(西宮市甲子園口)

上手く時間が作れず、しばらく頂くことが出来なかったのが、JR甲子園口駅近くの「ターメリック Turmeric」さんで供される、土曜日と日曜日のランチタイムのスペシャルダルバートです。仕事を終えて駆けつけ、何とか滑り込みで間に合いました。マトンカナでお願いしました。この日のメニューは、中央にマトンカレーとパパドゥ、それを取り囲むように6時の位置のバート(ご飯)から時計回りに、ダル、茄子と大根のタルカリ、ゴーヤとじゃが芋炒め、チキンカレー炒め、野菜パコダ、オクラとじゃが芋の和え物、茄子のアチャール(チャトニ)、そしてデザートのスジハルワです。
食後のチヤもお願いしました。

どの一品も美味しいのですが、一番のお気に入りは、焼き茄子のアチャール(チャトニ)です。ついつい美味しいと唸ってしまうと、キランさんがお替りを持って来てくださいました。茄子は大根と一緒にタルカリとしても登場しています。茄子のアチャールを調べてみると、その表現する単語は Achaar ではなく Chokha がよく用いられています。THE NEPAL COOKBOOK (Association of Nepalis in the Amercas)でもMASHED EGGPLANT PICKLEとしてレシピが紹介されていますが、Bhanta Ko Chokhaと表記されています。Chokha については、THE STEAMING POTの「Food Name in Bihar and What The Mean in Regular Hindi」の記事で、Mashed VegetablesをRegular Hindi NameではBharta、Bihar Hindi NameでChokhaと表現するとの記載がありました。ネパールに接するインドの Bihar ビハール州の Litti Chokha が有名なため、ネパールでもChokha が使われているのでしょうか。次の機会にでも尋ねてみましょう。The New Indian Expressの「Litti chokha, the delicacy from India」の記事では、そのLitti ChokhaのChokhaについては以下のように記載され、茄子、じゃが芋、トマト等が使われている様です。

For chokha, brinjals are roasted on fire before the skin is peeled off. This is then mixed with mashed potatoes and even charred tomatoes with a bit of mustard oil.  Onions, green chillies and minimal spices complete the dish.  As the vegetables are mostly boiled or roasted, the flavours remain intact, along with some smokiness introduced due to the process.  The raw mustard oil also adds to the flavour.

ターメリックさんで頂ける美味しいネパール料理の数々は
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ターメリック Turmeric

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